『アナベル 死霊館の人形』と人形ホラー映画

こんにちは!Nekuboです。
そして、わが家のアナベル人形です。

アナベル人形とは、2013年に製作されたジェームズ・ワン監督作『死霊館』の冒頭に登場する呪いの人形のことで、その抜群のルックスと存在感により2014年には『アナベル 死霊館の人形』としてスピンオフ映画が製作されました。

今年の2017年10月13日(金)にはその続編となる映画『アナベル 死霊人形の誕生』の日本公開が決定し、またもやアナベル人形の恐怖が日本に蔓延することになります。

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第一章:人形ホラー映画とは?

『アナベル 死霊館の人形』は、アメリカに実在する呪われた人形“アナベル”を物語のベースとしたホラー映画です。

このような人形を題材にしたホラー映画のジャンルを“人形ホラー映画”と呼びますが、そもそもこのジャンルのことをどれだけ知っていますか?

おそらく、世界で一番有名な人形ホラー映画といえば『チャイルド・プレイ』(1988)ではないでしょうか?

チャールズ・リー・レイという名の殺人鬼の魂が魔術によって人形に宿り、そして誕生した殺人人形「チャッキー」が人を襲う映画です。

88年の第一作『チャイルド・プレイ』はその当時の子供たちを恐怖のどん底に叩き落とし、アメリカではこれを観た子供たちが人形を捨ててしまう、という現象が巻き起こるほどに多大な影響を与えています。

とはいえ『チャイルド・プレイ』はあくまで人形ホラー映画というジャンルに大きく貢献しただけであって、そもそものジャンルの起源は1929年にまで遡ります。

この年にアメリカで製作された“The Great Gabbo”という腹話術師と腹話術人形の奇妙な物語を描いた映画こそ人形ホラー映画のはじまりと言えます。

ただ、“The Great Gabbo”はクラシカルなホラー映画というよりは、怪奇なミステリー映画といった方が正しく、その後、1945年にイギリスで製作された『夢の中の恐怖』というオムニバス・ホラー映画の一篇“Ventriloquist’s Dummy”(『腹話術師の腹話術人形』)で初めて本格的な腹話術人形のホラー映画が誕生しました。

一括りに「人形ホラー映画」とはいっても、その中にはいくつもの違ったアプローチの仕方をする人形ホラー映画があります。そのいくつかを紹介しましょう。

(1)『ドールズ』(1987)や『チャイルド・プレイ』のように自我を持った人形が動きまわり、アクションを起こす。

(2)ジャンルの起源となった“The Great Gabbo”よりはじまった腹話術人形。その他の腹話術人形のホラー映画では、アンソニー・ホプキンス主演の『マジック』(1978)や『デッド・サイレンス』(2007)など。

(3)『ザ・ピット』(1981)や『MAY メイ』(2002)のような、人形が主人公をそそのかして、行動を起こさせ、主人公を破滅に追い込んだり、人生に何かしらの影響を与える。

このように、人形ホラー映画というジャンルを細かく観ていくと様々なタイプの怖い人形が存在していることが分かりますが、どの映画にも共通して言えることは、映画の物語を語るうえで人形が必要不可欠な存在となっていることです。

これは当たり前のことなのですが、同時に一番大切なことでもあります。そうでないと人形ホラー映画としては成立しませんから。

第二章:『アナベル 死霊館の人形』は人形ホラー映画なのか?

◇『アナベル 死霊館の人形』のあらすじ

1967年、第一子の出産をひかえたミアは、長年探し求めていたアンティーク人形(アナベル人形)を夫のジョンからプレゼントされ、幸せのなかにあった。

その日の夜、ミアとジョンの隣人であるヒギンズ家から、悲鳴のような音が聞こえ、何事かと思ったジョンはヒギンズ宅へ様子を見にいくことに…。

なかなか戻らないジョンに不安を覚えたミアもヒギンズ宅に向かおうと外に出るが、その直後、全身を血で汚したジョンが血相を変えて戻ってきた。

何が起きているのかも分からぬままのミアだったが、血まみれのジョンの姿を見て、とにかく警察と医者を呼ぶために自宅へと引き返すことに。

しかし、そこには、ミアがジョンにプレゼントされたばかりのアンティーク人形を抱いたヒギンズ家の娘であるアナベル・ヒギンズと刃物を持った男がいた。

二人がミアに襲い掛かるが、運よく駆けつけたジョンと警察によって、男は殺害される。一方、アナベル・ヒギンズはミアのアンティーク人形を抱いたまま、その場で自殺を図った……。

ーーこの事件から数日後

ニュースの報道によりアナベル・ヒギンズと一緒にいた男は彼女の恋人であることが判明。

アナベル・ヒギンズと、その恋人は事件の夜に彼女の両親を殺害しており、そこには二人が悪魔を崇拝するカルト集団の一味であることが関係しているのではないかと推測された。

事件後、アナベル・ヒギンズが抱いていたアンティーク人形はミアの手元に戻ったが、その日からミアのまわりでは奇妙なことばかり起きるようになる……。

そのせいかは分からないが、アンティーク人形にもどこか不気味さを感じたミアは、ジョンにその人形を捨てるように頼むのだった。

その後、ミアは第一子を無事に出産し、心機一転のために新しいアパートに引越し。しかし、引越し先でミアの目に飛び込んできたのものは、荷ほどきのために開けたダンボールの底から出てきた、捨てたはずのアンティーク人形だった。

その日から、ミアと生まれたばかりの愛娘テアの身に恐怖が降りそそぐことになる…。

◇アナベル人形は本当に必要か?

アナベル人形そのもののルックスや存在感そのものは抜群です。だからこそアナベル人形の初登場作となる『死霊館』では冒頭の数分しか出番がないにもかかわらず、スピンオフ映画が製作され、プロップレプリカまでも商品化されたのです。

しかし、それはあくまで人形そのものの話であって、人形ホラー映画としてアナベル人形が必要かどうかという部分に関しては、正直に言うと私は首を傾げてしまいます。

というのも、映画『アナベル 死霊館の人形』は、あたかも劇中で起こる怪奇現象にアナベル人形が関係しているような演出をしながらも、物語の核心に迫れば迫るほど、アナベル人形がいることの必要性が感じられなくなってくるからです。

ここからは物語の核心に触れます。

物語が進んでいくことで、主人公であるミアを襲う怪奇現象のすべては人形を媒体としてこの世に降りてきた悪魔の仕業であることが分かります。

そう考えるとやっぱり人形は必要なのかと思えますが、そうではありません。劇中の台詞からも分かることですが、この映画に登場する悪魔は人形に限らずモノが媒体となっていればこの世に降りてくることが可能だったのです。

この事実が明らかになった時点で、この映画の物語における人形の必要性は「悪魔が媒体とした先がたまたま人形だった」ということだけになり、それならば人形ではなくとも成立する物語なのでは?と考えてしまいます。

そして、物語の前半部(悪魔の事実が明らかになる前)に起こった様々な怪奇現象を振り返ってみても、人形とは直接的に関係のない怪奇現象ばかりが起こっていることにも納得がいってしまいます。

前半部で起きる怪奇現象とは、台所が大火事になったり、ミシンが勝手に動いたり…です。その合間合間で意味深にアナベル人形のカットが入るのですが、いかんせん人形とは関係ない怪奇現象ばかりなので、実はその前半部からしてアナベル人形の必要性という部分が非常にこじつけくさくなっているんですよね。

そして、悪魔の事実が明らかになってからの後半部でも、例えば床に横たわっていたアナベル人形がひとりでに起き上がり空中に浮くという場面があるのですが、そのまま空中に浮くアナベル人形にカメラが寄っていくと、実はアナベル人形を手に持った悪魔さんがわざわざ浮いてるように見せて驚かせてました!というマヌケなシーンに繋がり、これにより更に人形は単なる小道具にしか過ぎないという事実に拍車がかかってしまいます。

人形ホラー映画の物語において、「人形であることの必要性」が成されていないものは、登場する人形のデザインがいくら秀逸であっても人形ホラー映画とは言い難いのです。

特に『アナベル 死霊館の人形』はアナベル人形のデザインが素晴らしいだけに、人形ホラー映画というジャンルにおける「人形であることの必要性」が疎かになってしまっているという致命的なところが余計に際立ってしまったのでしょう。

というわけで、私は『アナベル 死霊館の人形』を人形ホラー映画としては低く評価していますが、10月に日本での公開を控えている続編『アナベル 死霊人形の誕生』はそのタイトルからも察せられるようにアナベル人形の誕生秘話のようなので非常に楽しみにしています。

ちょっと先ではありますが、夏の風物詩といえば怪談噺やホラー映画ですから、続編の予習がてら『アナベル 死霊館の人形』を観てみるのも悪くはないですよね。

わが家のアナベル人形に怒られないか心配です…。

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