【取材】「気づいたら、初監督から12年。10年ぶりの長編映画」ガレッジセール・ゴリこと照屋監督作品『洗骨』舞台挨拶

2月9日(土)より、全国ロードショーとなる『洗骨(せんこつ)』。1月吉日、都内某所にて日本では沖縄以外での初お披露目の場、舞台挨拶付き特別試写会が行われました。

気づいたら、初監督から12年。10年ぶりの長編映画『洗骨』

本作の監督・脚本を務めたのは、テレビでもお馴染みガレッジセール・ゴリ改め、照屋年之さん。舞台挨拶の場で作品について語る時には、お笑い芸人のオーラは一切なく、12年間続けてきた監督の姿がありました。

沖縄の風情を感じさせるBGMが流れ、監督、キャスト合わせて、8名が登壇。

まずは監督より、「こんばんは!本名の照屋年之で監督をやらせていただきました。

映画の現場は本当に大変で苦しかったからこそ、出来上がった作品が一生懸命出産したわが子のようにかわいいんですね。

親バカって子どもを自慢したくなるように、この映画をぜひとも、ひとりでも多く多くの方に観ていただきたいと思い、1年半経って、やっとこの日が来ました。

みなさん、この映画をぜひ楽しんでください。よろしくお願いいたします!」と、挨拶。

本作の主人公・新城信綱役を演じるのは、奥田瑛二さん。

「どうもみなさん。心より感謝申し上げます。みなさん、パンフレットなど見て(ストーリーを)想像なさっておられると思いますが、これだけは断言します。損はさせません。そしてみなさんを裏切ってみせます。以上です」と、奥田さん。

そして、信綱の長男・新城 剛役を演じる筒井道隆さん。

「こんばんは。死を扱う話なんですが、楽しい話になっておりますので、最後まで楽しんで。そして死について考えてもらえれば…」

とコメントの途中にキャストから笑みがこぼれ、

「あれ?いいんですよね?」と戸惑う筒井さん。監督から「死について考えてもらいましょう!」とフォローをもらい、少し照れながら「はい、よろしくお願いします」と、テレビ越しではなかなか見られない様子も。

信綱の長女・新城 優子役を務めたのは、水崎 綾女さん。

「みなさん、こんばんは。(会場のお客さんを見て)1階も2階もいっぱい。やっと1年半経って、(全国で)公開です。東京のみなさんに見ていただけるというのはとても緊張しています。沖縄や海外では『すごくよかった』と感想をいただいているので、東京のみなさんにもそういう感想を持っていただけたらと思っています」と、コメント。

信綱姉の夫・高安 豊役を演じたのは、坂本あきらさん。

会場がほのぼのするような口調で、「こんばんは〜。阪本ですぅ。沖縄は暑かったですぅ。この映画を観て、暑くなってください。いい映画ですぅ。」と挨拶し、

「親戚のおじちゃんみたい」と、監督がツッコむ姿も。(坂本さんは普段からいい意味で、撮影中も、キャストさんたちの肩の力を抜いていたのかなとも感じました)

優子の彼氏・神山亮司役を務めたのは、鈴木Q太郎さん。

今回、初めて役者デビューした、お笑い芸人のQ太郎さんは「普段、お笑い芸人をやらせていただいていまして、役者としてはどうか温かい目で観ていただきたいと思っております。ただ、全力でやりましたので。もし、よろしければ、温かい目で…」とコメントしました。

信綱の妻・新城恵美子役を務めたのは、筒井真理子さん。

「みなさん、こんばんは〜。みなさんお忙しい中、こんなにいっぱい足を運んでくださって、とても嬉しくて興奮しております。最後まで楽しんでいってください」と、胸の内を明かしました。

本作主題歌「童神」を担当した、沖縄音楽を代表する歌手・古謝美佐子さんの番になると、突然、左手を監督に向け、

「砂かけババァの真似しない!」と、すかさずツッコミを入れる監督。

「緊張しています、喋るのがダメなんです」という古謝さんに、「大丈夫ですよ」と監督が優しく励まし、

「とっても素晴らしい作品です。私自身、父親も叔母も『洗骨』をしました。高校生の時にしたので、はっきり記憶しています。その時を思い出して、映画なのに涙が出ました。

考えるものがいっぱいあると思います。涙あり感動あり、素晴らしい映画です」とコメント、思い出し涙ぐんだような瞬間も。

洗骨(せんこつ)は、まったく怖くない。映画にしたいと思った

司会者から、「『洗骨』という風習について知っていますか?」と客席のほうへ問いかけると、知らない人が圧倒的に多く、「知らないと思いますよ。沖縄出身の僕でさえ、(洗骨のことを)知らなかったですもん。三年前まで」と、監督。

「人が亡くなると、火葬。いわゆる燃やしますよね。昔の沖縄、琉球は、亡くなると遺体を棺桶に入れて、何年も寝かせるわけです。ミイラ化した遺体を棺桶から出して、遺族が骨を1本1本、水で洗っていく。だから洗う骨と書いて、洗骨と言うんですけど、それを2019年、まだ沖縄の粟国島で行われているんです。それに僕はびっくりしたんです。

この時代に? ミイラ、洗ってるの? まず法律、大丈夫なの? とか、いろんなこと考えたんですが、それも全然問題ないらしく、それでも怖いなとも思ったんですが、島の方に話を聞いたり、映像を見たりしたら、全く怖くなかったんです。むしろ、命を繋いでくれた自分の親やおばあちゃんに、今の自分がいることに感謝する行為だと思ったんですね。

とても美しい行為だったので、これは映画にしたい!と。

せっかく芸人をやっている僕が撮るのですから、ヒューマンコメディ。笑って泣ける映画にしたいなと思って作ったので、前半泣けますし、ジーンとくるところもあれば、また笑えたり。堅っ苦しい映画ではないので、楽しんでいただけたらと思います」と作品への愛を熱く語りました。

沖縄での上映を終わった時のことについて聞かれると、「ウチの親父が『たぶん、俺も長くないと思うから、死んだから洗骨してほしいな、と思った』と言ったら、横にいた兄が『めんどくさいから燃やす』って言ったんです。だから、ウチの親は火葬です」とエピソードを語り、会場が盛り上がりました。

「撮影中の記憶は、ほとんどない」滞在期間中のエピソードとは

沖縄には約1ヶ月、滞在して撮影したそう。その際のエピソードについて振られると、

奥田さんは「東京で台本を何度も読んでイメージして挑みましたが、沖縄の自然、幻のような美しさを感じて、無になろう、沖縄に肉体(信綱)を置こうと思った。

朝起きたら、信綱。撮影中、そのまま信綱。夕方終わって泡盛1杯飲んでも、信綱。2杯飲んでも、信綱。3杯飲むと、奥田が出てくる。4杯飲むと、すけべな奥田が出てくる。0時になると解散。というのを30日間、繰り返していた。

はっきり言って、撮影中の記憶がほとんどないんです!真面目な話。自分で、あれかなと思うくらい記憶がない。

だからそれぐらい、全て身も心もさらけ出し、照屋監督に預けた映画ですね」とコメント。

すると、監督は「奥田さん。奥田さんは記憶にないかもしれませんが、僕らは、酔っ払ってエロくなってる奥田さんを、しっかり覚えています。ご心配なく」と返し、また会場は笑いの渦に。

そして、奥田さんと筒井さんは確執ある役柄だったことから、プライベートではこんなエピソードも。

ふたりについて、監督は「撮影終わっても、待ち時間とか、みんなで食事するときも、ふたりだけ一切しゃべらないんですよ。めっちゃ気使うじゃないですか…。俺、もともと仲悪かったふたりをキャスティングしちゃったのかなと思って。

そしたら、やっぱり確執ある役だから、(役に入っていて)プライベートでも目を合わさない。だから、完全にそれが映像に入っています」と、コメント。

水崎さんは妊婦の役柄について聞かれると、「お腹をタオルで膨らませる予定だったのですが、生と死をつなぐ重要な作品だったので自腹を切ってもいいからシリコンのものを用意してほしいとお願いしたら用意してくださって、寝るときもご飯食べるときもお風呂入るとき以外は、全部つけていました」と、役柄へのこだわりについて語りました。

すると、監督は「本当に、妊婦に見えるんですよね。撮影の休憩で、奥田さんと水崎さんと先に食堂に入っていたんですが、僕がパッと行ったら、一般人の中に奥田瑛二ってわかりますし、水崎さんは腹出てるわけじゃないですか。

他のお客さんチラチラ見てるわけですよ。『もしかして奥田瑛二、女腹まして、しばらく落ち着くまで沖縄に潜伏してる?!』って感じに見えるんですよ。(奥田瑛二だと)分かってても、誰も声かけない。映画が上映されてやっと誤解が解けた」と、おもしろエピソードを語り、会場が笑いの渦に包まれました。

そして、沖縄の人を演じる際、大変だったことについて坂本さんが聞かれると、「あれ?俺?」と。挨拶のときに監督の言った「親戚のおじちゃん」再びといった瞬間も。

気を取り直して坂本さんは演技について「沖縄の言葉は、全然わからなかった。あまりに早くてね。でも雰囲気だけ掴んだから、なんとかできたんじゃないですかね」とコメントし、監督は「現地の人に見えて、撮影終わっても現場に置いていきそうになった」と、演技力の高さを語りました。

すると、坂本さんは「日焼け止めを塗らなかったから頭のてっぺんの皮が剥けちゃったの!沖縄は暑いですよ〜!」と、またまた「親戚のおじちゃん」に。

役者デビューしたQ太郎さんは「普段コントをやっているんで、コントのお芝居が抜けなくて(大きな)身振り手振りがあって…」というと、監督が「あと、カメラを見るんですよ!待って!ってなりました」と芸人さんならではの苦悩もあったことを明かしました。

司会者から「出演シーンが少なくとも誰もが母の存在を想っていてある意味、主役ですね」と紹介された筒井さんは「主役のように見えるのは皆さんの母を想う気持ちが素晴らしかったので、そう見えたんだと思います。

奥田さんは、(作中に使う)私の遺影を見ながら、『(妻の)安藤和津にしか見えなかった』とおっしゃっていて、そこまで役作りをしたんだと思いました」と微笑みながらコメントし、

奥田さんは、「自分の部屋に、クランクイン前にずーっと彼女の遺影を置いておいたの。ウチの嫁さんがキッチンで料理しているわけ。僕は背中向けていて彼女のことを想像しながら、ふっと振り返ったときも、彼女の顔がパッと見えてニコッと笑い、覚醒すると、あ、ウチの嫁さんだというところまでたどり着いてクランクインした」と役作りについて語りました。

そして監督は、筒井さんの演技に対するこだわりについて「遺影の撮影について、『もっと優しい顔が撮れると思います。撮らせてください』というのが何度もあった」と話すと、筒井さんは「だって、監督が『この頭蓋骨がいいかな〜』って選んでらっしゃるので、やっぱり洗われるんだよな。洗いたいと想ってもらえる顔じゃないといけないと、結構プレッシャーだった」と気持ちを明かすと、

続けて監督は、「頭蓋骨、何種類か用意してもらって、どの頭蓋骨が筒井さんに合うか、ずっと横に置いていたんですけどね。でも、(こだわりがあったから)本当に遺影がみんなが会いたくなるような優しいお母さんだなと思える写真が撮れたんです」

「棺桶に入っているシーンでは、いわゆる死化粧で寝るじゃないですか。パッて、筒井さんが目を開けるんです。死に役なのに。

『監督すみません。もうちょっとメイク直していいですか、病気で死んだんですよね。もう少しコケたほうがいいと思うんです』って起き上がってメイクして、棺桶入って、目瞑って、パッと目を開けて、

『監督、もうちょっとメイク…』って何回もやるんで、早く死ねよ!!(笑)って!死なないんですよ!全然死なないんですよ。蘇るんですよ。

やっぱり本当に素晴らしい死に顔になるんですよね」と笑いを取りつつ、作品の魅力を語りました。

さらに奥田さんのこだわりについても、「奥田さんだって、『トランクスのシーンがあるけど、ブリーフにしたい。情けない男だから股間が黄ばんでてもいいか』とか言って、汚い白ブリーフを着た奥田瑛二の姿を見るのは初めてだと思います。衣装さんに『もっと、股間伸ばしてほしい』とか注文が若手芸人みたいで、その点も珍しく楽しめると思います」と、監督。

最後に、沖縄出身でもある古謝さんへ改めて作品の感想について聞かれると、

「沖縄の言葉の演技が大変だったと話も出ていましたけど、映画を見て最高でしたよ。会話、訛りが最高だった。直すところ、全然なくて。身内になったような気分になりました。本当に最高の映画です」と、舞台挨拶を締めくくりました。

キャストみなさん仲睦まじい光景が見られ、監督のコメントをはじめ、作品の魅力がとても伝わる舞台挨拶でした。

映画『洗骨』は、2月9日(土)より、全国ロードショーです。ぜひ劇場へ足を運んでみてください。

【Story】洗骨――。今はほとんど見なくなったその風習だが、沖縄諸島の西に位置する粟国島などには残っているとされる。粟国島では西側に位置する「あの世」に風葬された死者は、肉がなくなり、骨だけになった頃に、縁深き者たちの手により骨をきれいに洗ってもらうことで、晴れて「この世」と別れを告げることになる。

沖縄の離島、粟国島・粟国村に住む新城家。長男の新城剛(筒井道隆)は、母・恵美子(筒井真理子)の“洗骨”のために、4 年ぶりに故郷・粟国島に戻ってきた。

実家には、剛の父・信綱(奥田瑛二)がひとりで住んでいる。生活は荒れており、妻の死をきっかけにやめたはずのお酒も隠れて飲んでいる始末。そこへ、名古屋で美容師として活躍している長女・優子(水崎綾女)も帰って来 るが、優子の様子に家族一同 驚きを隠せない。様々な人生の苦労とそれぞれの思いを抱え、家族が一つになるはずの“洗骨”の日まであと数日、果たして 彼らは家族の絆を取り戻せるのだろうか?

©『洗骨』製作委員会
公式HP:http://www.katsu-do.com

◾監督・脚本:照屋年之
◾出演:奥田瑛二 筒井道隆 水崎綾女/大島蓉子 坂本あきら
山城智二 前原エリ 内間敢大 外間心絢/鈴木Q太郎 筒井真理子
◾製作:映画『洗骨』製作委員会 ◾️制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
◾制作プロダクション:ファントム・フィルム
◾配給・宣伝:ファントム・フィルム
◾スペック:2018/日本/カラー/スコープサイズ

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