恋愛体質?うるせえ!震えてろ!『ちはやふる』を見習え!

こんにちは、ライターの川合裕之です。今回は映画『ちはやふる』シリーズについて書かせてもらおうと思います。

もうこれ以上言うこと無いんじゃないか?というくらい各所で高く評価されているシリーズ。この記事ではこの映画をあえて避けているそこのアナタに視点を少し変えてお届けしましょう。

DogEarFilms流 こんな人にオススメ

・「少女漫画原作の映画ってほら、アレでしょ?」なんて思っているそこのあなた
・流行っているものはどうも苦手なそこのあなた
・会いたいくらいで身体が震えるようなタイプの人間を心底毛嫌いしているそこのあなた

「少女漫画」というより「スポ根」なんですよ!

わかります。わかりますよ。
少女漫画原作、流行りの俳優さんと女優さん――。

なんか怖いですよね。若い男と若い女がウジウジウジウジと色恋沙汰に右往左往。
そんな気がしますよね。わかります。でも「ちはやふる」は違うんですよ。

恋愛感情、あります。
三角関係、あります。

でもそれがメインじゃないんですよ。むしろそうした「恋愛」が大きな障壁になってるんですよ。

普通なら男と女が結ばれるのがゴール。その恋愛を阻むのが三角関係や、自信のコンプレックス、互いの性別や性格の齟齬……。例えば両者の家柄が起因して結ばれない、なんてのはロミオとジュリエットですね。

つまりは非常によく見る、もっと言えば見飽きたようなラブコメなんてものはシェイクスピアの時代から脈々と伝わるベタベタな物語形式なんですよ。恋愛の成就がゴールで、その道筋にあらゆる障害物が用意されている。普通ならこんな具合なんでしょうが、「ちはやふる」は違います。

ゴールは?「かるた」です!


じゃあ『ちはやふる』シリーズの各登場人物たちの目指すところはどこか?それはまぎれもなく「競技かるた」でテッペンを獲ることです。競技かるたは頭脳を必要とする一方で瞬発力も問われますから勉学とスポーツの両方に置き換えて考えることが出来ますね。

この「かるた」に対して「恋愛」がノイズとして差し込まれてくるわけです。

好きな子のことで頭が一杯。勉強や仕事が手につかない。
好きな人がいるが、振られてしまうかもしれない。

そんな経験ありませんか?冷静になって考えてみてください。ものすごく非効率的じゃないですか?脳のメモリが全部そこに持っていかれるクセに、結果として生産性はゼロ。実際には何も起きていないのに、時間だけが過ぎてしまう。これを就職や転職に置き換えてみてくださいよ。「御社で働きたいけど、オンシャくんはウチのことどう思ってるんかな?」って足踏みしてても入社できないでしょ。何してるんですか?!

そうなんです、中途半端な恋愛は己の敵なんです。邪魔なんですよ。「結び」の最後もこのメッセージが体現されるような締めくくりとなっています。安心して鑑賞してください。

恋愛はウィークポイント

こういうウィークポイントがしっかり反映されているんですよ。
特に「結び」で登場する優希美青の演じる花野さんは典型的な恋愛体質。入学早々に双眼鏡で先輩男子を物色し彼氏候補のデータをノートにまとめます。その双眼鏡もバッチりデコられています。そして太一(野村周平)のルックスに惹かれて競技かるた部に入部。まさに「会いたくて震える」タイプの女です。

広瀬すず演じる千早に「爪切らんかいや」と諭されて「いや昨日塗ったのに?」と反発するシーンが印象的。上の句、下の句では見えにくかった千早の性質――色恋とかどうでもよくて、とにかくかるたが好きで仕方がないという側面――が浮かび上がります。

そんな花野さんが恋愛感情本位で動くことで物語の流れが一時的に停滞します。要は彼女は俗世の恋愛を具現化したような悪役として機能しているんですよ。

物語全体、シリーズ全体を通して千早は恋愛に対して恐ろしく鈍感なんですが、そういった感情にエネルギーを割かないことこそが彼女の強みでもあるんですよね。間違っても愛の力で打ち勝つみたいなことはないです。KANには悪いけど。愛で勝ってるわけではないんですよ。大事なのは技術と頭脳とそのためのトレーニングなんですよ。

少し不愛想で無機質な印象を与えてしまったかもしれません。しかしそれは大きな誤解です。たしかに恋愛にはさほどエネルギーを割いてはいませんが、映画『ちはやふる』のシリーズ自体はこれ以上にないほどエネルギッシュなんですよ。最新作は「結び」とありますが、その次もまたあるやもしれません。楽しみに待っていましょう。

 

(c)2018 映画「ちはやふる」製作委員会 (c)末次由紀/講談社

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ABOUTこの記事をかいた人

川合裕之

95年生のフリーライター。得意分野は「映画」と「散歩」。関西在住。