改名前に見ておきたい!『僕たちの嘘と真実 DOCUMENTARY of KEYAKIZAKA 46』

2020年がこんな年になるなんて、いったい誰が予想していたでしょうか。新型コロナウイルスは、あらゆる国の人々の生活に影響を与え、その影響は映画業界も例外ではなく、公開延期や未だ公開に至っていない映画もあります。

今回紹介する『僕たちの嘘と真実 DOCUMENTARY of KEYAKIZAKA 46』も例に漏れず、当初4月初めに公開が予定されていましたが、9月に入ってようやく劇場公開へ。

この記事は【ネタバレ】を含むため、作品の知識を入れずに映画を鑑賞したいという人は、一度手を止め、ぜひ鑑賞後に自分の感想と照らし合わせてみてください。というのも、この映画には、観た人によって異なった、それぞれの感想を持たれると思うからです。では、見応えたっぷりな映画を、ポイントを絞って紹介します!
DogEarFilms流 こんな人にオススメ

・心揺さぶられるドキュメンタリー映画を観たい人

・大迫力のライブ映像を大画面で観たい人

駆け抜けた5年間の軌跡を追ったドキュメンタリー

この映画は、欅坂46が歩んだ5年間の道のりを記録したドキュメンタリー映画です。グループ結成時から改名を発表した現在まで、決して平坦ではなかった彼女たちの活動の軌跡を、当時の映像とメンバーのインタビューによって構成しています。

平手友梨奈という圧倒的存在

ファンではなくても、平手友梨奈という名前を聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。平手は在籍期間全曲のセンターを務め、「絶対的センター」と評されていたメンバー。そんな欅坂のエースが、突然の脱退を表明したのが2020年1月のこと。

欅坂46は「笑わないアイドル」とも言われ、これまでのアイドルの常識を覆したパフォーマンスは、見た人の心をざわつかせ、惹きつけます。歌詞に合わせて髪を振り乱して歌う少女たち、そんな欅坂をセンターとして牽引する平手の表現力はずば抜けていました。

彼女の表現力は欅坂だけの活動に収まらず、映画『響』の主人公に抜擢され日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞したり、音楽番組では平井堅の楽曲にダンサーとして参加し話題になったりと、その才能は周囲からも高い評価を得ています。

天才と周りの人々の苦悩

天才はその才能ゆえ孤独になると言われますが、この映画は天才と周りの人々の苦悩を描いた映画でもあるでしょう。映画の予告でも使われていますが、メンバーの小林由依が「(平手は)ずば抜けた表現力があって、それが自分にはないってわかっているから…」と語るシーンがあります。

欅坂のメンバーは往々にして、平手のバックダンサーなどと揶揄されることがありました。これに対してはメンバーもさまざまな感情があったようですが、すぐ近くで見ているからこそ、そのパフォーマンスや存在感を実感していたのでしょう。平手なしでは成立しないグループにいる自分たちの存在意義を必死で探していたようにも見えます。

それだけでもメンバーは葛藤を抱えることになりますが、平手が体調や精神に限界に達してしまったときにどう穴を埋めるか、平手の代わりにセンターを務めるメンバーは彼女に匹敵するパフォーマンスが自分にできるのか、それで果たしてファンは満足してくれるのかといった苦悩がついて回りました。

周りの人々から語られることで浮かび上がる像

この映画には、平手友梨奈のインタビューが含まれていません。彼女抜きでは成立しない映画なのに、彼女から語られる言葉がないのなら、それこそ映画のタイトルにある「嘘」になるのではないか。

しかし周りの人々から語られることによって浮き彫りになってくる平手友梨奈も、また「真実」の姿と言えるでしょう。実際のところは、平手にインタビューを申し込んだが断られてしまったためこのような構成になったそうです。これはある意味で物足りなく、またある意味で功を奏しています。平手の考えていたことは彼女にしかわからない、しかしだからこそ私たちは彼女が考えていたことを想像してしまうし、いつか語られるかもしれない言葉に期待するからです。

欅坂46というグループの希少さ

欅坂のパフォーマンスといえば、一体感のあるダンスが魅力の一つです。アイドルというと、やはり自分を押し出していきたいと考える女の子たちが集まりやすい傾向にあるのではないでしょうか。もちろんそれが求めらるし、ある意味当たり前なのですが、その点で欅坂は稀有なグループに思えます。

というのも、自分のことよりもグループを、メンバーをという気持ちのメンバーが多く、それゆえ一体感のあるパフォーマンスができるからです。劇中でメンバーも発言していますが、欅坂は優しいメンバーが多い。シャイで前に出るタイプではない女の子たちが多いし、メンバーのことを思い合っているのが映画のところどころで伝わってきます。そんな女の子たちが偶然集まって構成されたというだけでなんだか奇跡のようにも思えてしまいます。

少女たちの変化の記録

この映画は、少女たちが成長していくさまを記録した映画の側面もあります。初期の頃の平手はあどけなくアイドル然としていて、この数年後、狂気をはらんだパフォーマンスをしている人物とはまるで別人です。かつては同じ方向を向いていたけれど、活動していく中で欅坂を去っていったメンバーもいます。そして、最初の頃は平手抜きではステージに立つことは考えられないと思っていたメンバーたちの心境の変化が現れるのも見受けられます。

「渋谷という街の成長や発展とシンクロするように、グループの拡大発展も描きたかった」と、この映画を撮った高橋栄樹監督は語っています。デビュー曲『サイレントマジョリティー』のMVが撮影されたのは渋谷の工事現場でした。アイドルグループもそのときどきの彼女たちはその瞬間にしかいない。そんな彼女たちの成長や変化を楽しめる映画でもあります。

嘘と真実とは?

この映画の見どころのひとつとして、迫力のライブ映像があります。メンバーの息づかいまで聞こえてくるリアルさで、それだけでも見応えがあります。しかしその舞台裏でどれほど彼女たちが苦しんでいたかを目の当たりにして、見てはいけないものを見てしまったような気にさえなります。

この映画のタイトルにもなっている「嘘」と「真実」とは結局何なのか。楽曲に登場する「僕」に合わせて作り出された欅坂のイメージが嘘で、今回映し出された彼女たちの姿が真実?世間で言われているネガティブな噂が嘘で、本当はお互いを思い合っている彼女たちが真実?受け取り方によって、それぞれでしょう。もちろん、ドキュメンタリー映画と言っても、どこを切り取るかによって全く別の作品が出来上がります。今回の映画も意図的に切り取られた瞬間をつなぎ合わせて出来たものであることを忘れてはいけないのだと思います。

最後に

10代や20代前半の多感な年頃を、アイドルとして全速力で駆け抜けてきた彼女たち。そんな彼女たちの舞台裏を垣間見てしまうと、「普通の生活をしていれば、経験しなくてもいいような辛いこともあっただろうな……」と胸が苦しくなります。このように母親のような心境になってしまう人は、ところどころ泣いてしまうポイントがあるので、ハンカチをお忘れなく!

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ABOUTこの記事をかいた人

佐々木希

映画好きなアラサーフリーライターです。知らなかった世界を知ったり、新しい価値観に出会えるのが、私にとっての映画の醍醐味。邦画・洋画、新作・旧作問わず、ご紹介していけたらと思います。