みなさま、こんにちは!! ライターsummeriです!
年に一度、横浜の海の上で開かれる映画館があるんです。なんだそりゃって話ですが実際にあるんですな、これが!
その名も「海に浮かぶ映画館」。
海の上で映画が上映される場所。とても謎が多く、興味を引く映画館である。
今回は、そんな地図も住所もない謎多き「海に浮かぶ映画館」館長の深田隆之さんに話を聞いてみた。



元々この劇場は、横浜ボートシアターという劇団が演劇の練習や公演を行う場所です。
ある時、知り合った方が、たまたまそこで照明技師をされている方で見学をさせてもらい、この場所にとても興味を持ちました。最初はそこで開催されるイベントの手伝いをしていましたが、関係者と話をしていて、この場所で映画をフィルム上映したら面白いんじゃないかという話になりました。その話が膨らんでイベント化したのが第一回目の『海に浮かぶ映画館』でした。





この上映会はテーマやコンセプトが先行して形になったものではなく、まずはやってみようと思い、始まった上映会でした。よってアウトプットを明確に考えていたわけではなかったんです。



上映会を行う前からこの場所には通っていたので、場所自体の持つユニークさは把握しているつもりでした。しかし、いざ映画の上映会を行うとなった時、何が観客にとって魅力的に映るか、どのような面白い体験となるか、初回は自分でも明確な答えは出ていませんでした。それが、ようやく最近になって分かってきたようにも思います。
来場者の方から頂いた意見などで、この上映会は面白いのかもって思えるようになってきました。笑
私が感じるユニークなポイントは、この場所は映画と向き合う緊張感を高める装置となっていることです。


初回から、この上映会では、みなとみらい線・元町中華街の駅からスタッフが上映会場まで誘導しています。初めての参加者は、どこに連れて行かれるか、わからない状態でガイドについていき、少々険しい道を歩いたり、ミステリーツアーのような体験をしてもらいます。そして船で映画を見て、帰る。その一連の流れが面白いとの意見は多いですね。
上映場所に向かう途中のミステリーツアーのような体験で少し不安を感じたり、緊張されたりする方が多いと思います。何せ「海に浮かぶ映画館」なので、どのような場所に連れていかれるのかと。情報が少なく、訪れたことがない空間で気を張り、研ぎ澄まされた状態で映画を見るという体験が、映画館や家で映画を観る体験と異なり、良い作用をもたらすのではないでしょうか。これまで映画を観る時は椅子にもたれかかっていたのに、ここでは背筋を伸ばして見てもらう感じですかね。


実際問題として、メジャーな作品は上映料が高く複数の作品のプログラムを組むのは難しい面があります。基本的にはインディペンデントの作品を上映しています。
また多くの方が普段目にする映画はシネコンで上映されているようなメジャーな作品が多いですよね。それ以外はあまりタッチポイントがないと思いますが、メジャーな配給会社が扱っていない作品や、自主制作等のインディペンデントな作品でも非常に魅力的な作品は、山程あります。
私はただ映画の上映イベントがやりたいわけではありません。
まず根底には映画って本当に面白い、様々な映画の持つ魅力を、もっと多くの方に知ってもらいたいという気持ちから上映会を行なっています。


メジャー作品では扱わない題材や、描き方をしている映画の側面を知り、それがとても印象に残ったそうです。そして、その作品の監督のファンとなり別の作品も見に行かれた、と。その声を聞き、このイベントを通じて、観客と映画を出会わせることが出来たと感じました。メジャー作品以外でも面白い作品があるという認識が生まれたことで、これまでの映画体験とは異なる体験が生み出せたと思います。
今後もこの「海に浮かぶ映画館」を通して、魅力的な映画と観客が出会うきっかけとなる場所にして行きたいと思います。

深田 隆之 プロフィール
1988年生まれ。2013年、短篇映画『one morning』が 仙台短篇映画祭などの国内映画祭に入選。2018年『ある惑星の散文』が第33回ベルフォール国際映画祭の長編部門、国内では福井映画祭でノミネートされる。また、2013年から行われている船内映画上映イベント「海に浮かぶ映画館」の館長でもある。